楽園に暮らす     紅葉散る   56.七五三         2003・11・10    
  七五三
 七五三の時期となり、誰もが通る行事であるのに、なぜか
ピンとくるものがない。どうしてもこの日の記憶がはっきり
しない。もしかしたら、七五三のお祝いをしてもらっていない
のではないか。が、アルバムを開けばちゃんと記念写真は
ある。僕は気になって、生まれ故郷まで戻り、参詣した
という熊野神社に向かった。(写真1)
学校の行き帰りにシイの実を拾っては食べた神社である。
そして、確かにそのシイの実は約40年後もたくさんの実を
落としていた。しかも、シイの実の味も変わっていない。
味覚の記憶は案外信頼できるかもしれない。

 どこからか、ひょっこり、男の子がお参りに表れた。
鈴を鳴らし、拍手(かしわで)を打った。
思い出がよみがえるかもしれないと思い、そのうしろ姿に
小さい頃の自分を重ね合わせみた。(写真2)
同じように鈴を鳴らし、拍手を打つ。
しかし、やっぱり何も浮かんでこなかった。
 友人にも聞いてみることにした。すると、予想通りというか、
驚く結果となった。思い出はないが、記念写真はある
というのだ。つまり、こういうことかもしれない。
5歳という年齢には、七五三の行事は記憶するほど
印象的ではなかったということだ。あるいは、これは親の
行事であって、親にとって感慨深いものだったということだ。

 昔は、男女三歳で「髪置き(かみおき)」といって髪を伸ばし
結い直す、男子は5歳で「袴着(はかまぎ)」といって、
袴の腰をあて紐を結ぶ、女子は七歳で「帯解(おびとき)」
といって、つけひもをとって帯を締める、という大人に向かう
儀式だったそうである。
 それぞれの地域の氏神さまに、子供の成長の節目に
あたってその成長に感謝し、厄を払って今後の無事を
祈願するために参詣したのである。そもそも、この行事に
つき物の千歳飴にしても”千年飴”が始まりだそうで、
飴のごとく「寿命がのびるように」ということらしい。
よく見れば紙袋のカットはツルにカメである。(写真3)
千年も万年も長生きして欲しいという願いからなのだろう。
”七つ前は神の子”、といわれたように昔の子供は
いつ天に召されるかわからなかったからだろう。


 自分の記憶を埋めるために、最後の砦の母に聞いてみた。
両親にしてみれば、勿論喜びもひとしおだったが、
それ以上に当の本人は新調の洋服を着て、もらった
千歳飴に大喜びしていた、というのだ。
 こうなったら、千歳飴を買うしかない。(写真4)
固い飴を割る、口に入れるとミルキーの匂い。
確かに味わったことのある懐かしい味。
つい噛んでしまって歯にまつわりつく感触。
千歳飴を手にして大喜びしている自分の半ズボン姿が
映像として一瞬、浮かんだような気がした。僕もやはり、
七五三の行事を経てきたことだけは確かなことらしい。
しかし、結局それ以上の思い出にはつながらなかった。
 そこで一句、五七五ではなく七五三で
    思い出唯一 千歳飴 さみし      (木の実)

 ちなみに、当世七五三事情はというと、神社抜きの
『貸衣装で記念撮影』というから、ますます子供の
記憶には残らない行事となるだろう。
 物質的にも、肉体的にも、恵まれてきた今日では、
子供の成長の社会的な節目としてとらえても
いいのではなかろうか。たとえば、男女に関係なく、
3歳にして”はじめてのごあいさつ”、五歳になったら”
はじめてのおつかい”、七歳になったら”はじめてのたび”
なんていうのはどうだろうか。
本人の人生の礎(いしずえ)にもなろうと思う。

(写1) 何処にでもある熊野神社
村祭りなど生活に結びついた氏神




(写2) 5歳の男の子に乗り移る?



(写3) 鶴亀のカットと
          鶴亀の干菓子




(写4) なつかしの味 千歳飴
  七歳で七五三を祝う女の子の記憶は少し違うようである。
 頭に、頭ほどのリボンをつけたとか、親戚の下駄屋さんがポックリをお祝いに
 持ってきてくれたとか、神社や親戚を巡るうちに、千歳飴で袋がパンパンになったとか、
 思い出は具体的になる。この頃の2歳の差は大きい。        
H15・11・15
  ”初めてのご挨拶”とは隣近所に3歳になったことを本人が伝えにいく。
 ”初めてのお使い”はTV番組と同じ。
 ”初めての旅”は親と一緒に計画を立て、目的をもたせて一人旅をさせる。
 子供のいない僕の勝手な思いつきですが・・・・。
          H15・11・15
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