楽園に暮らす   葡萄稔る   52. 栗拾い   2003・10・25    
  栗拾い  
 我がログハウスの周りには自生の栗の木が2本ある。
どちらも日当たりがよくなり、よく実をつけるようになった。
 10月に入ると、どちらも一斉に実を落とす。
南側のは、何処かのおばあちゃんが拾いに来るし、
北側のは、何処かのサル軍団が取りにくるので、
それぞれ『ヒトグリ』、『サルグリ』と名づけた。『ヒトグリ』は
直接地面に”ドサッ”と落ち、『サルグリ』は納屋の
トタン屋根の上に”トターン”と落ちる。
 これを聞いてか聞かずか、5・6匹の小猿がやってきて
クリを食べ始める。そのうちに屋根中を飛び回ったり、
キャーキャー騒ぎまわる。まるで幼稚園か遊園地のように
なる。しかも、ほぼ一日おき位にやって来る。
 僕は頭に来て、「コォラーー」と怒鳴る。クリが惜しい
のではない。トタンはボコボコニなるし、母屋の
シングル屋根が傷むのである。
 逃げ帰った小猿たちも悲鳴をあげて泣いているから、
母猿に「危険なオヤジには近づくな!」と叱られているに
違いない。

 今年はおばあちゃんがこなかったし、猿も姿を消したので、
昨日の強風でどちらもクリの実だらけになった。(写真1)
 そこで僕も栗拾いと相成った。栗拾いも経験が要る。
大きいのはイガからはじけて周辺に転がっていることが
多いから、よさそうなものだけこれは手で拾う。
問題はイガの中身を拾うときだ。このイガは刺さったら
手でも足でも悲鳴をあげるくらい痛い。軍手に長靴、
頭には帽子が必要だ。それでも手で取らない方がいい。
長靴でイガの両端を開きながら押さえ、トングで挟んで
取るか、はじいて取る。(写真2)
いずれにしても、穴が開いていたり、細かい粉(糞)が
ついているのは虫食いだから避けたほうがいい。
 こうして集めた栗は水洗いして、できるだけ早いうちに
50度のお湯に30〜50分浸しておく。クリの中に住む
クリミガとクリシギゾウムシの幼虫を殺すためである。
さもないと、”風の谷のナウシカ”のオームの行進の如く
家中、彼らがゾッとする程、這い回ることになる。
 これらを煮るとか焼くとかすれば食べられるわけだが、
これがまた大変である。いくら強靭な爪の持ち主でも
参ってしまう。やはりクリムキの道具が必要だ。
これでやっと口に入る。ただし、クリを食べた気になる
には20粒位は、むく手間を惜しんではいけない。
文句を言うような輩(やから)は始めから栗拾いなどは
せずにスーパーに行って”ムキグリ”を買ったほうが
得策である。
 僕は今、2通りの栗の食べ方にはまっている。
一つは、イガに詰まったものをそのまま焚き火に
突っ込んで”火中の栗”を拾って食べるのである。
野趣に富んでいるし、焚き火自体も楽しくなるのだ。
おそらく、他人のために苦労して、時として馬鹿な目に
あう自分にふさわしいからだろう。
もう一つは煮た栗を日に干してカチカチにした勝ち栗
である。日に干すとシイタケのようにうまみがでる
のだろうか、甘くなるだけでなく、噛めば噛むほど
味わい深いものがある。なんといっても戦国時代の
兵糧だから保存食にも、もってこいである。

 ところで、今回拾ってみて分かったことだが、
『ヒトグリ』は薄い色で実が大きく、割りに虫食いが
少なかった。逆に、『サルグリ』は濃い色で実が小さく、
ほとんどが虫食いであった。
 食べてみてさらに驚いたことに、『サルグリ』の方が断然
甘味が強いのである。どちらも自生の山栗には違いないが、
『サルグリ』はいわゆる芝栗で、『ヒトグリ』は種類が違う
のではないだろうか。
 始め、屋根があるから猿が来て食べていると
思っていたが、いやいや、敵はサルモノ、
こちらの方が美味いことを知っていたに違いない。

(写1) 強風の翌日は
     絶好の栗拾い日



(写2) イガの中身はトングで取る


(写3) 水洗後、お湯で殺虫する
左;『サルグリ』、右;『ヒトグリ』



(写4) 左;クリシギゾウムシ(左)と     
      クリミガ(右)の幼虫
右;ゾウムシの脱出と脱出穴
    脱出に約6分かかった
  『イガより栗』ということわざがある。
 「トゲのある嫌味をいう人」より「優しい味のある人」の方がいいという意味だが、
 『栗よりクリシギゾウムシせんべい』という新しいことわざ(?)をご存知だろうか。
 なんとゾウムシを50匹ほど集め、上新粉に混ぜて焼いた塩味せんべいだそうである。
 さすがの僕もこの新しいことわざを確認するまでには至っていない。
     
  今回栗拾いなどしなければ、内緒の話、僕はムキグリ派である。
 余裕があったら、栗鹿の子とマロングラッセを食べたいところ。
                      H15・10・25
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